複数のPLM(製品ライフサイクル管理)製品をつなぐ「PLM Interface」の開発を担当する若口克実。海外SEとのやり取りなど、グローバルに活躍する日々を送る若口だが、最初は「不安しかなかった」という。現在に至るまでの成長の軌跡とは。
2年目のプロダクト開発で
直面した2つの課題
若口が図研を就職先に選んだのは、「日本のモノづくりに貢献できる仕事」と感じたからだった。就職活動のなかで図研の存在を知り、機械部品の設計者である父からも評判を聞いた。
名だたる企業が図研のCADシステムを導入していると聞き、シェアの高さに驚きました。製造業の現場から、世の中で日々使われている製品に貢献できることにやりがいを感じ、入社を決めました
CAD製品の開発部署を経て、現在のPLM製品の開発部署に配属されたのは、入社2年目のときだ。
PLM(Product Lifecycle Management)とは、製品のライフサイクル(企画・開発・設計・生産準備・生産・販売・保守・廃棄)を一元管理し、設計・生産効率の向上やコスト削減などを目的とするシステムである。
図研ではエレクトロニクス領域に特化した『DS-CR』などのPLMソリューションを提供しています。私が新たに担当することになったのは、図研のPLMと、すでにお客様側で運用されているメカ領域を含む他社のエンタープライズPLMをつなぐ新製品『PLM Interface』でした
これまで、図研のPLMと他社のエンタープライズPLM間とのデータ連携は、個別のカスタマイズで実現されていた。
これを汎用化し、代表的な機能を搭載したパッケージ製品が「PLM Interface」だ。ゼロからのカスタマイズが不要になることで、顧客は開発費用の低減や、保守運用の負担軽減が期待できる。設計・製造プロセスの効率化に大きな貢献ができる製品だが、開発にあたる若口には課題もあった。
データ連携には、他社のエンタープライズPLMの知識が不可欠なのですが、当時の私はまだ自社システムの理解を深めるだけでも大変な状況でした。そこへさらに学ぶべきことが増え、果たして自分にやりきれるのかとプレッシャーを感じました
それでも「この知識は今後必ず自分の武器になる」と考えた若口。まずは徹底して自力で調べることを優先し、その結果を豊富な知識を持つ先輩社員に確認する方法で理解を深めていった。
もうひとつの課題は語学だった。PLM Interfaceは図研ドイツとの共同開発で進められ、ミーティングなど、海外のメンバーとのやりとりが密に行われる。共通言語は英語だ。しかし、若口は学生時代から英語が得意ではなかった。
「不安しかなかった」と話す若口をサポートしたのは、部内で結成された“英語強化チーム“だった。
部長やマネージャー、語学力に長けた先輩がチームになり、若手社員が英語を学ぶ機会を作ってくれたのです。英語限定の『模擬ミーティング』でプレゼンやディベートを経験したり、海外メンバーとのミーティングに同席して耳を慣らしたり。1年ほどじっくり時間をかけて英語を学ばせてもらいました。今ではすっかり苦手意識がなくなりましたね
粘り強いコミュニケーションで、
海外との架け橋に
入社3年目。新機能の追加プロジェクトで、若口ははじめてメインの担当となった。
開発テーマは「ビューイング機能」の実装。「DS-CR」が有するCADの生データをPLM Interfaceを介して送信し、他社のエンタープライズPLM上で、設計データを3Dで参照可能にすることだ。
実現すれば、データ運用において大幅な業務効率化を図ることができるこの新機能。顧客であるアメリカの大手メーカーからの要望を受け、PLM Interfaceの次期標準機能としての採用が決定したものだ。
アメリカで製品導入を担当する図研USAのSEからの要望を受け、若口がまず着手したのは「英語の仕様書作成」だった。
こちらの理解を英語で文書化し、それを説明することで、お互いの認識が合っているかを確認していきました。上流工程での認識違いは、あとから大きなトラブルとなります。指摘と修正を何度も繰り返しながら、理解を深めていきました
DS-CRからCADの生データを送信するには、対象となる他社のエンタープライズPLM側がどのような決まりでデータを管理しているかを知り、そのデータ構造に合わせた変換をPLM Interfaceで行えるようにする必要がある。そのために、他社のエンタープライズPLMの開発元であるシステム会社に、データ構造の仕様など開発に必要な情報を直接確認しなければならなかった。
問い合わせ先の担当者はインドにいました。時差の都合で話せる時間が限られていたり、英語で繰り出される専門用語が理解できなかったりと、円滑なコミュニケーションを図るだけでも苦労したことを覚えています。3ヶ月という限られた開発期限が日々消化されていく中で、焦りを感じる場面も多々ありました
インドのシステム会社から得た情報を基にビューイング機能の仕様を作り、図研アメリカのSEに報告する。SEからさらなる疑問点を投げかけられ、再びインドのシステム会社に確認する。コミュニケーションを繰り返しながら、仕様の精度を上げ、図研ドイツのメンバーと共に開発を進めていった。
ユーザーである顧客から直接フィードバックを受ける図研アメリカのSEとは週1回の定例ミーティングに加え、適宜連絡を取り合いながら粘り強くコミュニケーションを重ねた。
図研USAのSEは、自分よりずっと年上のベテランで知識も経験も豊富な人でした。このプロジェクトで初めて知り合ったのですが、会話をするごとに少しずつ距離が縮まっていくのを感じました。
なんとか工期内にユーザーの要望を満たす製品が開発できたときは『これでプロジェクトがうまくいくよ!』と大変感謝されました。その言葉をもらったときは嬉しかったですし、私自身大きな達成感がありました
「日本のモノづくり」から「世界のモノづくり」に貢献する人材に
図研ドイツとの共同開発、図研アメリカとの折衝、海外のシステム会社への問い合わせ。「2年目で今の部署に配属されたときは、ここまでグローバルな環境で仕事をするとは思わなかった」と話す若口だが、その声は弾んでいた。
今は、海外メンバーと1対1で話すのがとても楽しいですね。入社当時の自分が今の姿を見たら、あまりの変化にきっと驚くでしょう。技術知識はもちろんですが、もっと英語を鍛えて、日本語と変わらないコミュニケーションができるようになるのが理想です。ITエンジニアとしてグローバルに活躍したい人には、図研は非常に魅力的な環境だと思います
開発で身につけた他社のエンタープライズPLMの知識も、若口を大きく成長させた。社内ではすでに「他社のエンタープライズPLMのことは若口に聞け」と頼られるようにもなり、オンリーワンの人材として存在感を増している。
会社に貢献できることに手応えを感じながら、若口は「PLM Interfaceをより良い製品にしたい」と目標を掲げる。
PLM Interfaceはまだ生まれたばかりの製品です。機能や品質を追求する余地は十分にあります。お客様に響く機能を実装するためには、現場でどのような機能が必要とされているのか、PLMがどのように運用されているのかを理解しなければなりません。
SEやその先のお客様とも直接会話をする機会を増やして、PLM Interfaceの可能性を広げたいと考えています
PLM Interfaceの海外での反響に、若口は「自分が開発を担った製品が世界に届いていることを肌で感じる」という。「日本のモノづくりに貢献したい」という思いは、今では「世界のモノづくりへ」と広がろうとしている。
Questions & Answers
- 入社前後で図研に対する印象は変わった?
- 入社前のイメージ通り「製造業の現場から、世の中で日々使われている製品に貢献できる」というやりがいを感じています。お客様と直接関わる営業やSEという職種だけでなく、開発も直接お客様と関わる機会があり、より一層やりがいを感じることができました。
- 図研の好きなところは?
- 新人の育成に力を入れていることです。新入社員に専属の教育担当が付くのはもちろんのこと、開発部主体で能力強化チームが結成されるなど、成長できる環境があります。
- 職場にはどんな同僚・先輩・上司が多い?
- スキルの向上に対して意欲的に取り組む人が多いです。英語やプログラミングスキルなどの向上に役立つ教材やアプリケーションを共有しあったり、業務時間後に勉強会を開いている先輩もいます。
- 学生時代の経験が役に立っていることは?
- 学生時代に学んだプログラミングスキルが図研の仕事にも生かせています。私の担当製品の開発では、主にC#・Java・VBScriptを使用しており、学生時代に学んだ言語でした。
- 休日はどのように過ごしてる?
- 休日は妻と2歳の息子と家で遊んだり外出したりしています。毎週末新たな息子の成長を見ることができ、驚きつつも家族との楽しい時間を過ごしています。